家計の見直しを行うに当たって「今年こそは家計簿をきっちりつけよう!」
アプリを入れ、ノートも用意して、最初の数日は順調。けれど仕事や家事で疲れた夜、レシートを出して入力するのがだんだん重たくなり、気づけば止まってしまう——。実はこれ、誰にでも起こる“ふつうのこと”です。人は「細かい作業を毎日欠かさず続ける」のが必ずしも得意ではありません。意思の力だけに頼る方法は、最初の勢いが落ちた途端に続かなくなるのです。
では、家計管理をあきらめるべきでしょうか?答えはNO。大切なのは必ずしも「家計簿を毎日つけること」ではなく、「放っておいても貯まっていく仕組み」を作ることです。意思や気合いの波に左右されない“自動運転”を整えるのがゴールです。
ここからは、その考え方と具体的なやり方を、わかりやすく順を追って説明します。今日から少しずつ整えていけば、数か月後には「以前よりラクに貯まっている」を体感できるはずです。
ポイント1:家計を「3つの財布」に分ける
1つめのポイントは、まず家計を「3つの財布」に分けることです。「3つの財布」とは何なのか、具体的に説明していきます。
「お金は全部一緒」の落とし穴
多くの人は、毎月の給料を「ひとつの財布」や「ひとつの口座」に入れて管理しています。しかし、この方法では「どのお金が生活費なのか」「どのお金が将来のためなのか」が曖昧になってしまいます。結果として、必要な資金まで気づかないうちに使ってしまうことがよくあります。
例えば、旅行代や趣味の支出と、将来の教育資金や老後資金がごちゃ混ぜになってしまっていると、いざというときに「思っていたより貯まっていない」という事態になりかねません。
「3つの財布」の考え方(役割をはっきり分ける)
お金の“色分け”をして、目的別に3つに分けます。これだけで判断が一気にラクになります。
- 「備える」財布(守るためのお金):病気・ケガ・失業・急な出費に備える“非常用”。一般的に目安は生活費の3〜6か月分といわれています。
例:生活費が月20万円 であれば、目安は 60〜120万円。
- 「使う」財布(毎月の暮らしのお金):家賃、光熱費、通信費、食費など“今月の生活に必要な分”。ここを明確にすると、「今はここまで」と線を引きやすくなります。
- 「貯める」財布(未来のためのお金):教育資金・老後資金・旅行など、目的を名前でラベリングして入れておく場所。
例:「教育」「老後」「旅行」「引っ越し」など、口座名やメモで目的を見える化。
「備える」の決め方をもう少し丁寧に説明します
- あなたの月の生活費を把握(家賃・光熱・食費・通信・交通・保険・最低限の娯楽)。
- その合計額× 3〜6 =「備える」財布の目標額
- 自営業・フリーランス・歩合制の方は6〜12か月分を検討すると安心です。
- 最初は1か月分から。ハードルが下がり、最初の一歩が踏み出しやすくなります。
「使う」を週毎に設定する理由
“1か月分”の食費・日用品をずっと意識するのは大変。週ごとの上限(例:週1万円)にすると、守るべき線が短くわかりやすくなり、調整もしやすくなります。
「貯める」を増やす小ワザ
- 目的別にサブ口座や別の銀行を使い、見た目も分ける
- 口座名やメモに目的名と目標額・期日を書いておく
- 目標額を段階(25%/50%/75%/100%)で進捗表示すると達成感が出ます
ポイント2:給料日に振り込まれる給与を“自動で”振り分ける
「3つの財布」に分けただけではお金は貯まりません。では、具体的にどうすれば良いかを説明していきます。
「残ったら貯める」は続かない
多くの人が月末に「今月こそ貯めよう」と考えますが、月末は出費がかさみがちです。意思だけで守るのは難しく、どうしても先送りになります。
仕組みを先に決める(給料日は“流れを作る日”)
給料が入った当日または翌営業日に自動振替予約を設定しておき、何も考えずにお金が定位置へ動くようにします。
実際の並べ方(例:手取り20万円のケース)
- 先取り貯金(貯める箱):例えば15〜20%であれば 3万〜4万円
- 固定費用口座(「使う」財布-固定費):家賃・電気・通信・保険など“自動引落し専用”
- 週ごとの生活費(「使う」財布-変動費):週1万円×標準4週=4万円など
- お小遣い:個人の自由枠。これも“月初に確保”しておく
※ボーナスがある方の場合は、例えば50%を貯める箱へ直行、残りで“ごほうび”や一時支出に充てる、というルールにすると悩まなくなります。
口座の実務セットアップ
例えば、以下のとおり設定します。
- メイン口座:給料の受け取り
- 固定費用口座:引落し専用(家賃・ローン・保険・サブスク等)
- 貯める口座:目的別に複数可(教育・老後・旅行など)
- 生活費口座/プリペイド:週予算用
自動振替する「日付の順番」も大切なポイントです。
- (1) 給料日+1~2営業日:貯める口座へ
- (2) 給料日+2~3営業日:固定費口座へ
- (3) 毎週月曜日:生活費プリペイドへ。
“先に貯める→次に固定費→最後に変動費”の順で、自然と守りやすくなります。
ポイント3:「見える化」より「使えない化」する
よく「見える化」が重要という話がありますが、家計改善においては「見える化」よりも「使えない化」が重要です。「使えない化」とは具体的にはどういうことでしょうか。
「見える化」だけでは行動は変わりにくい
支出をグラフで見ても、つい買ってしまうことはあります。人は感情の影響を受けるため、買い物への“摩擦”を増やすことが大切です。
具体策(今日からできる“使えない化”)
- ネットの“ワンクリック購入”をオフにする
- カード情報の自動保存を削除する(毎回入力=冷却時間)
- 上限の低いプリペイドやデビットを“生活費”に使う
- ネット用カードと日常用カードを分け、ネット用は利用限度を低く設定
- カード本体は家に置く(高額品の購入は“家で決めるようにする”)
- 欲しい物リストに1日寝かせる“24時間ルール”
- メルマガやセール通知をオフ(誘惑の入り口を閉じる)
- 買い物の曜日を固定し、“つい買い”を減らす
「我慢する」より「仕組みで買いにくくする」。これが長続きするためのコツです。
ポイント4:月に15分だけ状況をチェックする
仕組みを作ったら、その仕組みがうまくいっているかを確認することが大切です。ただ、確認といってもそれほど多くの時間を費やす必要はありません。月に15分程度の状況チェックでOKです。
いつ・どこで?
毎月同じ日・同じ場所で行うのがコツ。
例:毎月末の夜、家のテーブルで、15分だけチェックする。
チェックリスト
- 先取りした貯める口座は増えているか
- 固定費に増減はないか(サブスク等は増えてないか?)
- 週予算を超えやすい項目は何か(食費?コンビニ?)
- 来月の特別支出(旅行・税金・冠婚葬祭・更新料)を把握したか
- 赤字が出た週は翌週で”半分だけ戻す”ルールで調整(ゼロに戻そうとしない)
“割合で決める”のがブレない秘訣
収入が増減しても、割合(%)で設定するルールなら自動的に調整が効きます。例えば、以下のとおりです。(以下の割合についてはあくまでも一例であり、具体的な割合については個別の状況・生活スタイル等によって異なってきます)
- 貯める:15〜20%
- 住居:25〜30%(地域差あり)
- 食費・日用品:10〜15%
- 通信・光熱:8〜12%
- 自由費:5〜10% …など、目安を自分用に決めておきましょう。
ポイント5:季節の“大掃除”「四半期ごとの見直し」を行う
3か月に一度、15〜30分程度の“家計の大掃除”をしましょう。
- サブスクは本当に使っているものだけにする
- 保険・通信等は、年1回は相場の確認(放置コストが大きい分野)をする
- 目標(旅行・教育・老後)の進捗(%)を見える化する
- 生活環境の変化(残業増・通勤変化・子どもの進級)を反映する
ポイント6:ライフイベントで“必ず”調整を行う
- 結婚:固定費の重複(通信・保険)を整理。家賃の適正化をする。
- 出産:教育の積立スタート。ベビー関連は“毎月枠+予備費”で設定する。
- 住宅購入:ローン返済を“「使う」財布-固定費”へ。貯める割合を一時的に調整する。
- 転職・独立:収入が変わるので、先取り(%)を再設定。非常用は厚めにする。
- 介護・二世帯:光熱・食費の構造変化を反映し、週予算を再配分する。
ルール:大きな変化があったら、必ず家計の“型”を整え直す。
そのまま続けると、無理やムダが溜まりやすくなります。
家計改善に関するよくある質問とその回答
家計改善に関してよくある質問とその回答を以下のとおり解説します。
Q1:収入が不安定でも本当に大丈夫ですか?
A:大丈夫です。最低収入を基準に設計し、上振れは“「貯める」財布”に直行。非常用は6〜12か月分を目標に厚めにしておくとよいでしょう。
Q2:週の生活費が足りなくなることはないですか?
A:最初は1〜2割多めに設定。慣れてきたら500円〜1,000円単位で微調整。赤字週は翌週で半分だけ取り戻すようにすれば、継続しやすくなります。
Q3:サブスクをなかなか減らせない
A:例えば、ジャンルを3つまで(例:音楽・動画・学び)。毎月使った回数をメモし、2か月連続で2回以下は一度解約してみてはいかがでしょうか。
Q4:カード派と現金派、どっちがいいですか?
A:管理しやすい方でOKです。カード派は上限の低いプリペイドで週予算管理。現金派は週ごと封筒等で管理しましょう。
Q5:借金がある場合の優先順位はどうすればよいですか?
A:“貯める”は少額で継続しつつ、高い利息の返済を優先しましょう。(“貯める”は一旦見送って返済を優先するもありです)非常用は最低1か月分は確保しましょう。
Q6:大きな買い物はどう判断すればよいでしょうか?
A:24時間ルール+合計3回の見直し(今・翌日・週末)。手取りの○%以内など自分ルールを設定しましょう。
Q7:子どもの教育費はいつ始めればよいですか?
A:早いほどラクです。まずは月3,000円〜でもOKですので早めにスタートしましょう。増やせるタイミングで段階的に引き上げましょう。
Q8:親のサポートや急な医療費が心配
A:“「備える」財布”とは別に、年1回の臨時費用枠を見積もって取り置きしておきましょう。必要なら一時的に自由費を圧縮。
Q9:旅行や帰省など“特別支出”の扱いは?
A:月割りで積み立て(例:年12万円→月1万円)しておけば、直前の負担を回避できます。
家計改善をするうえでよくある“つまずき”と対処法
今まで説明してきたとおり取り組んでもうまくいかない、よくある”つまずき”とその対処法について解説します。
- 目標がぼんやり→ 目的名+金額+期限をひと言で(例:「来年8月に 旅行10万円」)。
- 口座を増やしすぎて混乱→ まずは3口座から。慣れたら目的別に1〜2口座追加。
- 週予算の出し入れが面倒→ 毎週同じ曜日に固定でチャージ。自動化できるカードを使う方法もあります。
- セールで気が緩む→ 欲しい物は事前リスト化。セールは“リスト内のみOK”にしましょう。
- 同居・家族間の価値観のズレ→ 共同のルールを3つだけ決める(例:週予算・大物購入の相談基準・サブスク上限)。
今日から始める、まず最初にやること
家計改善に向けて、具体的に明日からスタートするためのスケジュールは次のようなイメージです。あまり無理をせず、少しずつ進めていきましょう。
Day1:財布わけの設計
「備える」/「使う」/「貯める」の3つの財布を書き出し、目標額と役割を決める。
Day2:口座の整理
固定費引落し口座を分離。貯める用の口座(または目的別サブ口座)を用意。
Day3:自動振替の予約
給料日+1~2営業日で“貯める”、+2~3営業日で“固定費”へ。週予算のチャージ日も設定。
Day4:使えない化①
ワンクリック購入オフ/カード自動保存解除/ネット用限度額を下げる。
Day5:使えない化②
メルマガ解除/買い物曜日を決める/24時間ルール導入。
Day6:週予算のテスト運転
1週間だけ実施。足りない箇所をメモ。
Day7:15分レビュー
来週の週予算を微調整/サブスク1つ見直し/来月の特別支出を1件だけ洗い出す。
ポイント:完璧を目指さない。まずは“形”を作り、毎週5〜10%ずつ改善する感覚で。
まとめ:仕組みが、あなたを守る
家計簿が続かないのは、多くの人にとって自然なことです。意思に頼らずともお金が貯まる仕組みを作れば、日々の気分や忙しさに左右されません。以下の流れでお金が貯まる仕組み作りをしましょう。
- 家計を「3つの財布」(備える/使う/貯める)に分ける
- 給料日に自動で振り分け、先に貯めて残りで暮らす
- 「見える化」より「使えない化」でムダを防ぐ
- 月15分のチェックと季節の大掃除で微調整
- ライフイベントごとに“型”を整え直す
この“型”ができれば、家計簿を毎日つけずとも、自然にお金が積み上がります。
ただし、具体的に教育資金や老後資金の準備、保険や固定費の見直しについて不安があれば、専門家と一緒に“仕組み”を設計するのもひとつの方法です。
ハレノヒハレは「未来すべて、ハレになれ。」をコンセプトに、暮らしに合わせた家計の仕組み化や保険・固定費の見直しをお手伝いしています。具体的な家計の改善ステップを一緒に作りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください(具体的なご相談内容については「お問い合わせ」フォームからお送りいただけます)。
