個人でできるインフレ対策4選|概要とポイント、注意点をわかりやすく解説
預貯金は、元本割れのリスクが低い非常に安定した資産です。その反面、預貯金だけでインフレに対応するのは困難でしょう。
では、個人でできるインフレ対策にはどのようなものがあるのでしょうか?また、個人でのインフレ対策に失敗しないためにはどのようなポイントを押さえれば良いのでしょうか?今回は、個人でのインフレ対策の必要性や個人でできるインフレ対策について、お金のプロがわかりやすく解説します。
ハレノヒハレは「未来すべて、ハレになれ。」をコンセプトに、お客様の資産形成や保険見直しなどのサポートをしています。将来に不安を感じている際やインフレ対策をご検討の際などには、ハレノヒハレまでお気軽にご相談ください(ご相談したいことがございましたら「お問い合わせ」フォームからご入力をお願いいたします)。
個人でのインフレ対策はなぜ必要?
はじめに、インフレの概要と個人でのインフレ対策が必要である主な理由を解説します。
インフレとは?
インフレとは「インフレーション(Inflation)」の略称であり、物やサービスの値段(物価)が上昇することを指します。
インフレが起こると、たとえば従来は100円で購入できていたものが120円になったり150円になったりするなど、同じ物やサービスを買うためにより多くのお金が必要となります。
個人でのインフレ対策が必要な理由
個人でのインフレ対策が必要である理由は、インフレ対策をしなければ、自分の持っている資産の価値が相対的に低下することになるためです。
先ほど解説したように、インフレが起きると物やサービスの値段が上がり、従来と同じ金額では買えなくなります。
たとえば、ご自分の家族4人の食費が現在は1週間あたり1万2,000円である場合、インフレが起きると同じ物を買う場合に2万円がかかるかもしれません。同様に、お子様の将来の学費に備えて入学金や授業料などに充てるために300万円を積み立てていたとしても、インフレが起きて仮に学費が2倍となれば、現在の備えだけでは不足するおそれがあるでしょう。
このように、インフレ対策をしなければ、せっかく積み立てた資産が相対的に目減りするおそれがあります。
個人でできるインフレ対策1:金融資産投資
ここからは、個人でできるインフレ対策を4つ紹介します。はじめに、金融資産投資について解説します。
金融資産投資とは?
金融資産投資とは、株式や債券、投資信託などに投資をすることです。もっとも身近で、かつ少額から始めやすいインフレ対策であるといえるでしょう。
インフレ対策で活用したい主な金融商品は、株式と投資信託です。それぞれ、概要を解説します。
株式
株式とは、企業が資金調達のために発行する有価証券です。
株式を保有することで企業の株主となり、利益を原資とした配当金が受け取れるほか、売却によって値上がり益を得ることも期待できます。また、企業によっては株主優待制度を設けており、一定以上の株数を有することを条件にその企業の商品や商品券などが受け取れる場合もあります。
個人のインフレ対策として株式を保有する場合、証券会社に口座を開き、上場されている株式を購入することとなるでしょう。インフレ対策として株式を保有する場合、短期の値上がり益を期待するのではなく、長期的な成長が見込まれる複数の企業の株式を少しずつ買い足していくのが原則です。
投資信託
投資信託とは、「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。
投資の鉄則の1つに、「分散投資」があります。これは、投資先を1つに絞るのではなく、投資先を複数に分散すべきという考え方です。
分散投資をせずにA社の株式だけに投資をする場合、万が一A社が破綻したり業績が悪化したりすれば、資産を失うことになりかねません。しかし、A社だけではなく複数の企業に投資していれば、仮にA社が破綻したとしても、影響を最小限に抑えられます。
同様に、会社単位ではなく、国単位などでの分散投資も検討すべきです。100社に分散投資をしていたとしても、すべてが日本企業である場合、何らかの事情で日本経済が低迷してしまえば100社すべての価値が低下するおそれがあるでしょう。
一方で、日本のほかにアメリカやヨーロッパ、インドなど複数国に分散投資をすることで、仮に1国の経済が低迷しても資産を守ることにつながります。
とはいえ、投資先の多くの企業や国を1つずつ自分で選定しようとすれば、多大な時間や労力、そして情報を読み解く知識なども要します。さらに、多額の資金も必要となるでしょう。
そこで、これらの負担を避けて分散投資が実現できるのが、投資信託です。投資信託では、プロがその投資信託の「コンセプト」に合った商品を組み合わせて運用してくれます。投資信託のコンセプトには次のものなどがあり、詳細は各投資信託の目論見書などで確認できます。
| 投資対象の地域 | ・日本国内だけ ・アメリカだけ ・インドだけ ・全世界 等 |
| 投資対象の資産 | ・株式だけ ・債券だけ ・不動産だけ(REIT) ・複合 等 |
| 投資の方針 | パッシブ運用:運用指標(日経平均株価など)に連動する運用成果を目指す アクティブ運用:運用指標を上回る投資成果を目指す |
つまり、投資をする個人が投資信託に投資をすることで、自動的に分散投資が可能となります。
さらに、「日本国内の株式を対象とする投資信託」と「アメリカの債券を投資対象とする投資信託」、「全世界の株式を対象とする投資信託」など複数の投資信託を組み合わせることで、非常に広い範囲での分散投資が少ない資金から実現できます。
金融資産投資のポイント
金融資産投資には、どのようなポイントがあるのでしょうか?主なポイントは次の3点です。
- リスクを正しく理解する
- 分散投資をする
- 「ドルコスト平均法」を実践する
リスクを正しく理解する
金融資産投資には、リスクがあります。そのため、投資対象とする商品の性質を正しく理解したうえでインフレ対策をすべきでしょう。
なお、投資の世界において、「リスク」とは収益と損失の変動幅を意味します。収益側と損失側に揺れる振り子をイメージすると、理解しやすいかもしれません。
つまり、大きな収益を得られる商品であれば、その一方で大きな損失を被るおそれもあるということです。「リターンだけ大きくて損失はない」といった金融商品は存在しないという点を十分に理解しておく必要があるでしょう。
分散投資をする
先ほども解説したように、金融資産投資では分散投資が鉄則です。投資先の企業だけではなく、国や資産の種類なども分散させることで、リスクを分散させつつインフレに備えた資産形成をすることが可能となります。
「ドルコスト平均法」を実践する
金融資産投資では「ドルコスト平均法」の実施を検討するとよいでしょう。ドルコスト平均法とは、その時の価格に関わらず、定期的に一定額を買い続ける投資手法です。
たとえば、ある投資信託を毎月25日に5,000円分ずつ購入し続けることなどがこれに該当します。その時点での価格が高ければ5,000円で購入できる口数が少なくなる一方で、その時点での価格が低ければ購入できる口数は多くなります。
ドルコスト平均法を実践することで、積立期間にわたって購入価格が平準化され、リスクを抑える効果が期待できます。
個人でできるインフレ対策2:海外資産投資
個人でできるインフレ対策の2つ目は、海外資産投資です。ここでは、海外資産投資の概要を解説します。
海外資産投資とは?
海外資産投資とは、海外の株式や債券などに投資をすることです。
世界的に物価や金利が上昇する一方で、日本では低金利政策が続くと、相対的に円が売られ、円安が進む局面もあります。物やサービス、その原材料などは国を超えて取引されることが少なくありません。
そのため、世界各国でインフレが起きれば相対的に日本円の価値が低下し、これに伴って自分が保有する資産の価値も低下することとなるでしょう。
そこで、世界的なインフレへの対策として海外資産投資をすることが検討できます。世界的なインフレへの対策としての海外資産投資の主な選択肢を3つ紹介します。
- 外貨預金
- 外国株式
- 外貨建て債券
外貨預金
外貨預金とは、日本円ではなくドルなどの外貨で預金をすることです。預金は安全資産であるものの、「対円」の価値は為替レートにより日々変動します。
外国株式
外国株式とは、海外の企業が発行する株式です。株式を単体で購入することのほか、先ほど紹介した投資信託の形で購入することもできます。
外貨建て債券
債券とは、国や企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券です。所定の満期時には額面金額が償還されるほか、利子も得られることが一般的です。
外貨建て債券とは、債券のうち購入と利払いの支払い、償還のすべてが円以外の外国通貨で行われる債券を指します。
海外資産投資のポイント
海外資産投資によってインフレ対策をするポイントは主に次の2点です。
- 海外資産特有のリスクを正しく理解する
- 分散投資をする
海外資産特有のリスクを正しく理解する
海外資産には、特有のリスクである「為替変動リスク」と「カントリーリスク」が挙げられます。
為替変動リスクとは、為替レートの変動により日本円に換算した際の価値が変動するリスクです。たとえば、100ドルの外貨預金が外貨ベースでは100ドルのままで変動しなくても、日本円に換算する場合の価値は1ドル150円の場合と1ドル170円の場合とで異なるでしょう。これが、為替変動リスクです。
一方、カントリーリスクとは、その国の経済や環境や政治によるリスクです。たとえば、内乱や紛争、政情不安、テロ行為などにより、その国に所在する企業の価値が軒並み低下したり、その国の通貨価値が大きく下落したりする場合などがこれに該当します。
海外資産投資をする際は、「株式」や「債券」など商品ごとの一般的なリスクに加え、これら海外資産特有のリスクも理解しておく必要があるでしょう。
分散投資をする
海外資産投資においても、分散投資が重要です。海外資産投資では1つの国だけに資産を集中させるのではなく、複数の国を対象とする商品に資産を分散させるとよいでしょう。
個人でできるインフレ対策3:金投資
個人でできるインフレ対策の3つ目は、金投資です。ここでは、金投資の概要とポイントを解説します。
金投資とは?
金投資とは、金(ゴールド)に投資することです。金は現物があることから戦争や経済不安などに強いといわれており、「有事の金」といわれることもあります。インフレ時にもインフレ率と比例して価値が上昇しやすく、インフレ対策としても有力な選択肢となるでしょう。
金投資にはさまざまな方法があり、主に次の手法などが挙げられます。
- 金地金:インゴットや延べ棒などの現物を購入する方法
- 金貨:金貨の現物を購入する方法
- 純金積立:毎月一定額ずつ純金を購入する方法
- 金投資信託:金を投資対象とする投資信託を購入する方法
- 金ETF:金価格に連動する投資信託を購入する方法
金投資のポイント
金投資によりインフレ対策をする主なポイントは次の2点です。
- 自分に合った金投資の方法を見つける
- 現物の場合は適切な保管方法を検討する
自分に合った金投資の方法を見つける
先ほど紹介したように、一口に「金投資」といってもさまざまな手法があります。これらの特性を理解したうえで、自分に合った投資方法を検討するとよいでしょう。
現物の場合は適切な保管方法を検討する
金地金や金貨の場合、金の現物を所有することとなります。盗難リスクや紛失リスクに備えるため、貸金庫を契約するなど適切な保管方法を検討する必要があるでしょう。
個人でできるインフレ対策4:不動産投資
個人でできるインフレ対策の4つ目は、不動産投資です。ここでは、不動産投資について概要を解説します。
不動産投資とは?
不動産投資とは、アパートやマンション、一戸建てなどの不動産を購入または建築し、家賃収入や売却益などを得る投資手法です。不動産投資といってもその規模はさまざまであり、アパート1棟をまるごと建築して経営する場合もあれば、ワンルームマンションの1室を購入する場合などもあります。
また、先ほど紹介した不動産投資信託(REIT)や、不動産を小口化した金融商品なども存在します。インフレが起きた際、不動産の価値や適正な家賃額もこれに伴って上昇することが多いため、インフレ対策の1つであるといえるでしょう。
不動産投資のポイント
不動産投資のポイントは次の2点です。なお、ここではREITや小口化商品ではなく、アパート経営やマンション経営を前提としています。
- リスクを正しく理解する
- 投資というより「事業」という認識を持つ
リスクを正しく理解する
1つ目は、リスクを正しく理解することです。
不動産の現物への投資は他の投資と比較して一度に動く金額が大きいうえ、分散投資も容易ではありません。また、初期の賃料が永久に続く保証はなく、築年数が経てば家賃を下げざるを得ない可能性があるうえ、修繕なども必要となるでしょう。
不動産投資でインフレ対策をするのであれば、このようなリスクを正しく把握しておく必要があります。
投資というより「事業」という認識を持つ
2つ目は、投資というよりも「事業」であると認識することです。
他の投資とは異なり、不動産現物への投資では借り入れを伴うことも少なくありません。また、その地域における長期的な賃貸需要などを見極めたうえで、投資する物件を慎重に選定する必要があるでしょう。さらに、入居者が入らない場合にはリフォームなどの工夫をする必要があるほか、入居者の家賃対応などにも適宜対応する必要が生じます。
このように、不動産投資は他の投資とは異なり、事業としての側面が強いといえます。不動産現物への投資のハードルが高いと感じる場合には、REITなどへの投資も検討するとよいでしょう。
個人でインフレ対策をする際に知っておきたい主な制度
個人でのインフレ対策をより効率的に進めるには、NISAやiDeCoの活用を検討するとよいでしょう。ここでは、それぞれの概要を解説します。
- NISA
- iDeCo
NISA
NISA(少額投資非課税制度)とは、開設したNISA口座内で運用することで、株式や投資信託から生じる配当や分配金、譲渡益が非課税となる制度です。これらには通常20.315%の税金がかかるところ、これが非課税になることで、税金分の目減りを避けつつ効果的な資産形成が実現できます。
NISAには株式や投資信託を対象とする「成長投資枠」のほか、一定の投資信託に定期的に積み立て投資をする「つみたて投資枠」が設けられています。つみたて投資枠の対象は、長期の積立・分散投資に適するとして金融庁の基準を満たした投資信託です。
「つみたて投資枠」は少額からでも始めやすいため、これからインフレ対策を始めようとする際は、まずNISAのつみたて投資枠を活用して少額の投資から始めてみるのも1つの方法でしょう。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分が拠出した掛金を自分で運用して、資産を形成する年金制度です。掛金の拠出は最大65歳まで可能であり、原則として60歳以降に老齢給付金が受け取れます。
公的年金に上乗せをしてiDeCoによる老齢給付金を受けることで、老後の生活がより豊かなものとなるでしょう。掛金は全額が所得控除の対象となるため、税制の優遇措置を受けつつ資産形成をすることが可能となります。
iDeCoの運用は、自分で商品を選択して行います。運用商品の選択肢には定期預金や保険商品などもあるものの、投資信託などを組み込むことでインフレ対策としての効果も期待できます。
個人でのインフレ対策で失敗しないためのポイント
個人でのインフレ対策に失敗しないためには、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか?ここでは、個人のインフレ対策に失敗しない主なポイントを3つ解説します。
- 分散投資をする
- 各商品のリスクを正しく理解する
- プロに相談する
分散投資をする
1つ目は、分散投資をすることです。
個人でのインフレ対策をする場合、たとえば「日本株だけ」や「金投資だけ」など、似た値動きをする商品だけに資産をつぎ込むことはお勧めできません。投資の格言で「卵を1つのかごに盛るな」と言われるように、特定の商品だけに資産を集中させれば、万が一その商品の価値が大きく下落した際に資産の大半を失うおそれがあります。
大前提として、「絶対に安全で、絶対に値下がりしない」投資商品はありません。そうであるからこそ、分散投資をすることで、万が一1つの「かご」が落下してしまったとしてもすべての「卵」が割れる事態を回避でき、大切な資産を守りやすくなります。
各商品のリスクを正しく理解する
2つ目は、各商品のリスクを正しく理解することです。
繰り返しとなりますが、「絶対安全で、絶対に値下がりしない」投資商品などありません。インフレ対策として活用できる金融資産には、それぞれ異なるリスクがあります。特に、大きなリターンが見込まれる商品であれば、それに比例してリスクも高くなるのが原則です。
そのため、インフレ対策を個人で進めようとする際は各商品のよい面だけを見るのではなく、リスクを正しく把握しておくべきでしょう。
プロに相談する
3つ目は、プロに相談することです。
インフレ対策を個人で進めようとする際は、まずプロに相談することをお勧めします。お金のプロからアドバイスを受けることで自分の目的に合った資産形成プランが作成でき、計画的な資産形成が実現しやすくなります。
ハレノヒハレは「未来すべて、ハレになれ。」をコンセプトに、お客様のライフプランを踏まえた資産形成などのサポートをしています。個人でのインフレ対策についてプロの視点でのアドバイスをご希望の際は、ハレノヒハレまでお気軽にご相談ください(ご相談したいことがございましたら「お問い合わせ」フォームからご入力をお願いいたします)。
個人のインフレ対策に関するよくある質問
最後に、個人のインフレ対策に関するよくある質問に回答します。
預貯金をゼロにしてすべてをインフレ対策資産に充ててよい?
預貯金をゼロにしてすべてをインフレ対策資産に充てることは、お勧めできません。預貯金だけでのインフレ対策は難しいものの、一定期間分の生活資金や一定の予備資金などは、やはり安定資産である預貯金で手元に残すことをお勧めします。
どの程度の額を預貯金として残してどの程度の額をインフレ対策資産に充てるのかは、資産全体のバランスや日々の生活費などに応じて個別に検討する必要があります。必要に応じてプロに相談したうえで検討するとよいでしょう。
少額からでもできる個人のインフレ対策は?
少額からでもできる個人のインフレ対策としては、NISAのつみたて投資枠の活用などがお勧めです。NISAのつみたて投資枠では、1か月あたり100円や1,000円といった少額から資産形成を始められます。
まとめ
個人でできるインフレ対策について解説しました。
インフレとは物価が上昇することであり、個人での備えも検討すべきでしょう。個人でインフレ対策をせずすべての資産を預貯金で保有する場合、物価が上がることで、資産が相対的に目減りするおそれがあるためです。
個人でできるインフレ対策としては、金融資産投資や海外資産投資、金投資、不動産投資などが挙げられます。それぞれ異なるリスクがあるため、リスクを正しく理解したうえでインフレ対策を始めましょう。必要に応じてプロに相談することで、自分のライフプランに合った資産形成を実現しやすくなります。
ハレノヒハレは「未来すべて、ハレになれ。」をコンセプトに、お客様の資産形成などのサポートをしています。個人でのインフレ対策についてプロに相談したいとお考えの際などには、ハレノヒハレまでお気軽にご相談ください(ご相談したいことがございましたら「お問い合わせ」フォームからご入力をお願いいたします)。
