2026.10.16

相続人が見つからないときはどうする?疎遠な親族・行方不明の相続人への対処法をわかりやすく解説

親が亡くなり、相続手続きを始めようとしたところ、何十年も会っていない親族が相続人になっていた。あるいは、相続人の一人と連絡が取れず、遺産分割の話し合いが進まない。このような問題は、決して特別な家庭だけに起こるものではありません。

相続人が見つからない場合でも、状況に応じた解決方法があります。今回は、相続人の調べ方から、疎遠な親族への連絡方法、家庭裁判所を利用した手続きまで、具体的に解説します。

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相続人が見つからないと、遺産分割はどうなる?

遺産分割協議には原則として相続人全員の参加が必要

相続が発生すると、亡くなった方(被相続人)の預貯金や不動産などの財産は、遺言書などによって取得する人が決まっている場合を除き、相続人同士で分け方を決めることになります。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議で重要なのは、原則として相続人全員の合意が必要になるという点です。例えば、父親が亡くなり、相続人が母親と3人の子どもだった場合、母親と子ども2人だけで財産の分け方を決めても、残る1人が参加していなければ、原則として有効な遺産分割協議にはなりません。

これは、相続人同士の関係が良好かどうかにかかわらず適用されるルールです。長年交流がない兄弟姉妹であっても、法律上の相続人である限り、単に疎遠であることを理由に相続権がなくなるわけではありません。

特に注意したいのが、亡くなった方に離婚歴がある場合です。前の配偶者との間に子どもがいれば、その子どもも原則として相続人になります。現在の家族がその存在を知らなかったとしても、相続手続きを進める際には確認が必要です。

連絡が取れない相続人がいると、どんなことに困る?

相続人の一人と連絡が取れない場合、最も大きな問題となるのが、遺産分割協議を成立させることが難しくなる点です。例えば、亡くなった親の自宅を売却して、その代金を子どもたちで分けようと考えていたとします。しかし、相続人の一人と連絡が取れず、遺産分割について合意できなければ、予定していた売却を進められない可能性があります。預貯金についても、遺産分割協議に基づいて解約や分配を行う場合には、金融機関から相続人全員の関与を求められることが一般的です。

ただし、相続人全員の合意がなければ、何もできないわけではありません。遺産分割前でも、各相続人が単独で一定額の預貯金の払戻しを受けられる制度があります(同じ金融機関からの払戻しは150万円が上限です)。また、遺言書の内容によっては、遺産分割協議を経ずに手続きを進められる場合もあります。

つまり、相続人が見つからない場合でも、すべての財産が一律に動かせなくなるわけではありません。財産の種類や遺言書の有無などによって対応が異なります。

出典:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」

「疎遠」「連絡拒否」「所在不明」はそれぞれ対応が異なる

相続人と連絡が取れないといっても、その状況はさまざまです。住所がわからないだけなのか、住所はわかっているものの交流がないのか、連絡しても返事をしてくれないのか、それとも本当に行方がわからないのかによって、必要な手続きは異なります。

住所がわからない場合には、戸籍の附票などを利用して調査する方法があります。住所が判明している場合には、まず手紙などで事情を説明し、協議への参加をお願いすることが考えられます。一方、連絡しても話し合いに応じてもらえない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を検討することになります。調査を尽くしても所在がわからない場合には、不在者財産管理人という制度が利用できる可能性もあります。

大切なのは、最初から難しい法律上の手続きを考えるのではなく、現在の状況を整理し、必要な対応を順番に進めていくことです。

まずは相続人を確認!戸籍を使った調査方法

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認する

相続手続きを進める際には、まず誰が相続人になるのかを正確に確認する必要があります。そのために重要となるのが、戸籍の調査です。一般的には、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本などを取得し、婚姻歴や子どもの有無などを確認します。

例えば、父親が亡くなった場合、現在の戸籍だけを見ても、過去の婚姻関係や前婚の子どもについて、すべて確認できるとは限りません。以前の戸籍までさかのぼることで、初めて相続人の存在が判明する場合があります。

また、子どもがいない方の相続では、亡くなった方の父母や祖父母、兄弟姉妹などが相続人になる可能性があります。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その子どもである甥や姪が相続人になることもあります。このように、家族が把握している親族関係と、法律上の相続人の範囲が必ずしも一致するとは限りません。

なお、2024年3月からは戸籍証明書等の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村窓口でも、戸籍証明書や除籍証明書を請求できるようになりました。ただし、請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属に限られ、兄弟姉妹は含まれません。また、請求できる人が窓口に出向いて請求する必要があり、郵送や代理人による請求はできません。コンピュータ化されていない一部の戸籍も対象外です。相続関係が複雑な場合には、どの戸籍が必要になるのかを確認しながら進めることが大切です。

出典:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」

戸籍の附票を使って住所を調べる

相続人が誰なのか判明しても、その人が現在どこに住んでいるのかわからない場合があります。そのようなときに役立つのが「戸籍の附票」です。戸籍の附票とは、その戸籍に記載されている人の住所の履歴を記録した書類です。原則として本籍地の市区町村で管理されており、住所を変更した履歴などを確認できます。

例えば、20年以上会っていない兄弟が相続人になっている場合でも、戸籍の附票などを調べることで、現在の住民登録上の住所が判明する可能性があります。

ただし、誰でも自由に他人の戸籍の附票を取得できるわけではありません。請求できる人や必要書類には法律上の決まりがあり、相続手続きのために取得する場合も、正当な理由や相続関係を示す資料などが必要になることがあります。また、戸籍の附票に記載されている住所が、必ずしも本人の実際の居場所と一致するとは限りません。住民登録を変更せずに転居していたり、住所の記録をたどれなかったりする場合もあります。

戸籍の附票は相続人の住所を調べる有力な手段ですが、必ず連絡先が判明するというものではないことを理解しておきましょう。

相続人が多い場合は専門家への相談も検討する

相続人の調査は、家族関係が比較的単純な場合には、ご自身で進めることも可能です。しかし、相続人が多数いる場合や、何世代にもわたって相続手続きが行われていない場合には、調査が複雑になることがあります。

例えば、祖父名義の土地について相続登記をしないまま長い年月が経過し、その後、父親や叔父、叔母も亡くなっていたとします。この場合、それぞれの相続関係を確認する必要があり、関係者が当初より大幅に増えている可能性があります。こうした状態は「数次相続」と呼ばれ、遺産分割に関係する人の範囲が複雑になりやすいケースです。

相続人の調査や不動産登記については司法書士、相続人同士の紛争や交渉については弁護士など、内容に応じた専門家への相談を検討するとよいでしょう。

疎遠な親族にはどう連絡する?トラブルを避けるためのポイント

突然の連絡では、まず事情を丁寧に伝える

戸籍などの調査によって相続人の住所が判明した場合、次に考えるのが本人への連絡です。しかし、何十年も交流のなかった親族に突然連絡することは、連絡する側にとっても、受け取る側にとっても心理的な負担が大きいものです。特に、相手が亡くなった方と長年交流していなかった場合、突然相続の話を持ちかけられても、事情がわからず戸惑ってしまうことがあります。

そのため、最初の連絡では、いきなり遺産分割協議書への署名や押印を求めるのではなく、まず亡くなった方との関係や死亡の事実、相続人として連絡した理由などを丁寧に説明することが大切です。

例えば、「父が亡くなり、相続手続きを進めるために戸籍を確認したところ、相続人にあたることがわかりました。突然のご連絡で恐縮ですが、今後の手続きについてご相談させていただければと思います」といった形で伝えることが考えられます。相手が相続について詳しくない可能性もあるため、必要に応じて財産の概要や今後の流れも説明するとよいでしょう。

最初から相続放棄や財産の辞退を求めない

疎遠な親族に連絡する際、特に注意したいのが、最初から相続放棄や財産の辞退を求めてしまうことです。例えば、「長年親の面倒を見ていなかったのだから、相続は遠慮してほしい」と伝えたくなる場合もあるかもしれません。しかし、法律上の相続権は、親族との交流の有無だけで決まるものではありません。

また、家庭裁判所で行う「相続放棄」と、遺産分割協議で財産を取得しないことは、法律上異なる手続きです。相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされ、亡くなった方の権利や義務を一切受け継がないことになります。つまり、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も承継しません。一方、遺産分割協議で財産を取得しないと決めた場合でも、相続債務については債権者との関係で責任が残る可能性があります。相続放棄には、原則として自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内という期限もあります。

相手に十分な説明をしないまま財産の辞退を求めると、後々トラブルになる可能性があります。まずは相続人としての権利を尊重し、冷静に話し合いを進めることが重要です。

出典:裁判所「相続の放棄の申述」

返事がない場合はどうすればよい?

手紙を送っても返事がない場合、すぐに相手が相続を拒否していると判断することはできません。仕事や家庭の事情で対応が遅れている可能性もあれば、突然の連絡に戸惑っている場合もあります。

まずは一定の期間を置き、必要に応じて再度連絡することを検討しましょう。その際には、いつ、どのような方法で連絡したのかを記録しておくと、後に専門家へ相談する際にも役立ちます。ただし、何度連絡しても返事がないからといって、相手が遺産分割に同意したことにはなりません。また、返信がないことだけを理由に、直ちに行方不明者として扱えるわけでもありません。

住所が判明しているにもかかわらず、相手が話し合いに応じない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停など、別の方法を検討する必要があります。

相続人が話し合いに応じない場合はどうする?

連絡が取れても遺産分割に協力してもらえないケース

相続人の住所が判明し、連絡もできたものの、遺産分割について協力してもらえない場合があります。例えば、相続財産の分け方に納得できない、亡くなった方との関係が悪かった、ほかの相続人と話したくないなど、理由はさまざまです。

こうした場合、ほかの相続人だけで勝手に財産を分けることは原則としてできません。しかし、相手が協議に応じるまで、いつまでも待ち続けなければならないというわけでもありません。相続人同士での話し合いが難しい場合には、家庭裁判所の手続きを利用することができます。

家庭裁判所の遺産分割調停を利用する

遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、相続人同士の話し合いによる解決を目指す手続きです。相続人の一人または複数人が、ほかの相続人全員を相手方として申し立てることができます。原則として相手方のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てますが、当事者が合意で定めた家庭裁判所に申し立てることもできます。

調停では、それぞれの相続人の希望や事情を確認し、財産の内容などを踏まえて、合意できる方法を探っていきます。例えば、実家を売却して代金を分けるのか、特定の相続人が不動産を取得してほかの相続人に金銭を支払うのか、といった点について話し合います。

調停でも合意できなかった場合には、原則として自動的に審判手続きに移り、裁判官が事情を考慮して遺産の分け方を判断します。なお、調停は相続人同士の対立を解決するための制度であり、所在がまったくわからない相続人については、別途対応が必要になる場合があります。

出典:裁判所「遺産分割調停」

相続人の所在がわからない場合は「不在者財産管理人制度」を検討

不在者財産管理人とは?

戸籍や住所の調査を行っても、相続人の居場所がわからない場合があります。こうしたケースで検討される制度の一つが「不在者財産管理人制度」です。

不在者財産管理人制度とは、従来の住所や居所を離れ、容易に戻る見込みがない人について、本人の財産を管理する人を家庭裁判所が選任する制度です。例えば、相続人の一人が何年も前に家を出たまま戻らず、現在の居場所もわからない場合、その人の財産を適切に管理する必要が生じることがあります。

不在者財産管理人は、本人に代わって財産の管理や保存を行います。また、家庭裁判所の許可を得ることで、遺産分割協議に参加できる場合があります。

ただし、この制度は、単に連絡が取れない人の代わりに誰かを選んでもらう仕組みではありません。本人が不在者に該当するかどうか、財産管理人を選任する必要があるかどうかなどについて、家庭裁判所の判断が必要になります。

出典:裁判所「不在者財産管理人選任」

不在者財産管理人が遺産分割協議に参加する仕組み

不在者財産管理人が選任されたからといって、その管理人が自由に遺産分割協議を進められるわけではありません。不在者財産管理人の基本的な役割は、行方不明となっている本人の財産を守ることです。遺産分割協議に参加したり、不動産を処分したりする行為については、原則として家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要になります。

また、管理人は行方不明者本人の利益を守る立場にあります。そのため、ほかの相続人が「行方不明の人には財産を渡さず、残りの家族で分けたい」と希望したとしても、その内容がそのまま認められるわけではありません。家庭裁判所の案内では、遺産分割案について、不在者の法定相続分が確保されていることが必要とされています。

つまり、不在者財産管理人制度は、ほかの相続人にとって都合のよい分け方を実現する制度ではなく、行方不明者の利益を保護しながら、必要な法律上の手続きを進めるための制度なのです。

出典:裁判所「不在者財産管理人の権限外行為許可」

申立てに必要な書類・費用・注意点

不在者財産管理人の選任は、原則として不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立てができるのは、不在者の配偶者や相続人にあたる者、債権者などの利害関係人や検察官です。申立てには、申立書のほか、不在者の戸籍謄本や戸籍の附票、不在者の財産に関する資料、所在不明であることを裏付ける資料などが必要になります。具体的な必要書類は事案によって異なります。

申立手数料は収入印紙800円分で、このほかに連絡用の郵便切手などが必要です。また、不在者の財産状況などによっては、管理人の報酬を含む管理に必要な費用として予納金を求められる場合があります。不在者財産管理人に専門家が選任された場合などには、家庭裁判所の判断により報酬が支払われることもあります。したがって、申立手数料だけで手続き全体が完了するとは限りません。

さらに、不在者財産管理人は、遺産分割協議が終われば必ず役割を終えるというものでもありません。遺産分割で不在者が取得した財産は引き続き管理する必要があるため、失踪宣告がされた、不在者の死亡が判明した、所在が判明して本人が自ら財産を管理できるようになった、といった事情が生じるまで、管理が続くことになります。費用や手続きにかかる期間は個別の事情によって異なるため、利用を検討する場合には、事前に弁護士などへ相談すると安心です。

長年行方不明で生死もわからない場合は?失踪宣告という制度

失踪宣告とはどのような制度?

相続人が長年行方不明で、生きているのか亡くなっているのかもわからない場合には、「失踪宣告」という制度が検討されることがあります。失踪宣告とは、一定の要件を満たす行方不明者について、法律上、死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

失踪宣告には、大きく分けて「普通失踪」と「危難失踪」の2種類があります。普通失踪は、生死が7年間明らかでない場合に利用できる制度です。一方、危難失踪は、船舶の沈没や震災など、死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後1年間、生死が明らかでない場合に利用できる制度です。

ただし、一定期間連絡が取れないというだけで、自動的に死亡したものとみなされるわけではありません。配偶者や相続人にあたる者などの利害関係人が家庭裁判所に申し立て、所定の手続きを経る必要があります。失踪宣告を受けると、普通失踪では7年間の期間が満了した時に、危難失踪では危難が去った時に、死亡したものとみなされます。

出典:裁判所「失踪宣告」

不在者財産管理人制度との違い

不在者財産管理人制度と失踪宣告は、どちらも行方不明者に関係する制度ですが、その目的や効果は大きく異なります。不在者財産管理人制度は、行方不明者が生存している可能性を前提に、その人の財産を管理するための制度です。一方、失踪宣告は、法律上死亡したものとみなす制度です。そのため、失踪宣告によって本人の相続が発生し、配偶者や子どもなどに新たな相続関係が生じる場合があります。

例えば、父親の相続手続き中に、相続人である長男について失踪宣告が認められた場合、長男が法律上いつ死亡したとみなされるのかによって、父親の相続に関係する人が変わる可能性があります。死亡とみなされる時点が父親の死亡より前であれば、長男の子どもが代襲相続人となり、後であれば、長男の配偶者や子どもなどが長男の相続分を引き継ぐことになります。

このように、失踪宣告は相続関係そのものに大きな影響を与える制度です。単に遺産分割を進めたいという理由だけで安易に利用するのではなく、制度の効果を十分に理解したうえで検討する必要があります。

相続人が見つからないまま放置するとどうなる?

相続税の申告期限には注意が必要

相続人が見つからず、遺産分割協議が進まない場合でも、相続税の申告期限には注意が必要です。相続税の申告と納税は、原則として、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。相続財産が分割されていないという理由だけで、申告期限が延長されるわけではありません。

そのため、相続税の申告が必要な場合には、遺産分割が終わっていなくても、原則として法定相続分などに従って財産を取得したものとして税額を計算し、期限内に申告・納税することになります。

また、遺産が未分割の場合には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を、その未分割財産について当初の申告で適用できない点にも注意が必要です。ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておき、原則として申告期限から3年以内に分割が行われれば、後日、修正申告や更正の請求によって特例の適用を受けられる場合があります。

相続税が発生する可能性がある場合には、遺産分割の進行状況にかかわらず、早めに税理士へ相談することが重要です。

出典:国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」

不動産の相続登記にも期限がある

相続財産に土地や建物が含まれる場合には、相続登記の期限にも注意しなければなりません。2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

この制度は、2024年4月1日より前に発生した相続についても対象となります。以前から相続登記をしていない不動産がある場合には、原則として2027年3月31日までに申請する必要があります(相続による取得を知ったのが2024年4月1日以降の場合は、知った日から3年以内)。

しかし、相続人の一人と連絡が取れず、遺産分割協議がまとまらない場合には、期限内に登記を進めることが難しいケースも考えられます。そのような場合に利用できる制度の一つが「相続人申告登記」です。これは、自分が登記簿上の所有者の相続人であることなどを法務局に申し出ることで、相続登記の申請義務を履行できる制度です。ほかの相続人の協力を得ずに、相続人が単独で申し出ることもできます。

ただし、相続人申告登記は、遺産分割を成立させたり、不動産の所有権を確定させたりする制度ではありません。不動産を売却する場合などには、別途相続登記が必要です。また、その後に遺産分割が成立した場合には、遺産分割の成立日から3年以内に、その内容に基づく相続登記が必要になります。

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

出典:法務省「相続人申告登記について」

長期間放置すると相続関係がさらに複雑になる

相続人が見つからないからといって、そのまま何年も放置してしまうと、問題がさらに複雑になる可能性があります。例えば、父親が亡くなった後、兄弟3人で遺産分割をする予定だったものの、一人と連絡が取れず、手続きを進めないまま10年が経過したとします。その間に別の兄弟が亡くなれば、その兄弟の配偶者や子どもなどが相続関係に加わる可能性があります。さらに年月が経過すれば、関係者が増え、全員の意向を確認することが一層難しくなるかもしれません。

また、2023年4月からは、相続開始から10年を経過した後の遺産分割について、原則として特別受益や寄与分を考慮せず、法定相続分(または指定相続分)で分けるというルールが導入されています。ただし、10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の請求(調停や審判の申立て)をした場合などには例外があります。また、10年経過後でも、相続人全員が合意すれば特別受益や寄与分を考慮した遺産分割をすることは可能です。なお、2023年4月より前に開始した相続にもこのルールは適用されますが、2023年4月1日の時点で相続開始から5年を超えていた場合には、2028年3月31日までの猶予期間が設けられています。

これは、10年が経過すると遺産分割そのものができなくなるという意味ではありません。しかし、時間の経過によって、希望する分け方を実現することが難しくなる場合があります。相続人の所在がわからない場合でも、問題を放置せず、できるところから手続きを進めることが大切です。

出典:法務省「所有者不明土地の解消に向けて」

相続人が見つからない場合の具体例を紹介

事例① 会ったことのない前婚の子どもが相続人だった

ある男性が亡くなり、妻と2人の子どもが相続手続きを進めようとしたところ、戸籍調査によって、亡くなった男性には前婚の子どもがいることが判明しました。現在の家族は、その子どもと一度も会ったことがなく、連絡先も知りませんでした。

この場合、まず戸籍や戸籍の附票などを調べ、相手の住所を確認することが考えられます。住所が判明した場合には、手紙などで死亡の事実と相続手続きについて説明し、協議への参加をお願いすることになります。相手が協議に応じれば、ほかの相続人とともに遺産分割を進めることができます。一方、連絡しても話し合いに応じてもらえない場合には、遺産分割調停などを検討することになります。

重要なのは、現在の家族と交流がなかったからといって、前婚の子どもの相続権がなくなるわけではないという点です。

事例② 相続人の一人が行方不明で、実家を売却できない

母親が亡くなり、3人の子どもが実家を相続することになりました(父親はすでに他界しています)。しかし、長男は20年以上前に家を出たまま連絡が取れず、現在の居場所もわかりません。残る2人は実家を売却したいと考えていますが、長男を含めた遺産分割協議ができない状況です。

この場合、まずは戸籍の附票などによって長男の住所を調べ、連絡できる可能性がないか確認します。それでも所在が判明せず、不在者に該当すると判断される場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることが考えられます。管理人が選任され、必要な許可が得られれば、長男の利益を保護しながら遺産分割協議を進められる可能性があります。

ただし、実家の売却や財産の分配については、管理人の選任だけで自動的に実現するわけではありません。具体的な事情に応じた手続きが必要になります。

※いずれも制度を理解しやすくするための架空の事例です。

よくある質問

Q1. 相続人の一人と連絡が取れなくても、ほかの相続人だけで遺産を分けられますか?

原則として、相続人全員の合意が必要な遺産分割協議を、一部の相続人だけで成立させることはできません。ただし、遺言書の内容によっては遺産分割協議が不要になる場合や、預貯金の払戻し制度など、法律上認められた方法によって一部の財産を取得・管理できる場合もあります。相続人の所在がわからない場合には、不在者財産管理人制度などの利用を検討することになります。

Q2. 何十年も会っていない親族にも相続権はありますか?

はい。法律上の相続人に該当する場合には、長年交流がなかったという理由だけで相続権がなくなることはありません。例えば、亡くなった方の前婚の子どもや、長年疎遠になっていた兄弟姉妹なども、相続関係によっては相続人になります。ただし、誰が相続人になるかは、亡くなった方の配偶者や子どもの有無などによって異なります。

Q3. 相続人の住所を調べることはできますか?

戸籍の附票などを利用することで、住民登録上の住所を確認できる場合があります。ただし、取得できる人や請求理由には制限があり、必ず現在の居場所が判明するとは限りません。調査が難しい場合には、司法書士や弁護士などへの相談を検討するとよいでしょう。

Q4. 不在者財産管理人を選任すれば、必ず遺産分割ができますか?

必ずできるとは限りません。不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するためには、原則として家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。また、管理人は不在者本人の利益を守る立場にあるため、ほかの相続人が希望する内容で自由に財産を分けられるわけではありません。

Q5. 相続人が見つからない場合、誰に相談すればよいですか?

相談内容によって適切な専門家が異なります。戸籍の収集や不動産の相続登記については司法書士、相続人同士の交渉や遺産分割調停、不在者財産管理人の申立てなどについては弁護士への相談が考えられます。また、相続税の申告が必要な場合には税理士への相談も重要です。

相続人が見つからない場合には、複数の手続きが関係することもあるため、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

まとめ|相続人が見つからなくても、解決するための方法はある

相続手続きを進める際、長年会っていない親族や行方不明の相続人がいると、遺産分割が思うように進まないことがあります。しかし、相続人が見つからないからといって、必ずしも手続きを諦める必要はありません。

まずは戸籍などを調べて相続人を確認し、戸籍の附票などを利用して住所を調査することが基本となります。住所が判明した場合には丁寧に連絡を取り、話し合いを進めることが大切です。一方、連絡しても協議に応じてもらえない場合には遺産分割調停、所在がわからない場合には不在者財産管理人制度など、状況に応じた方法を検討できます。また、相続税の申告や相続登記には期限があるため、遺産分割が進まない場合でも、必要な手続きを放置しないことが重要です。

相続は、財産をどのように分けるかという問題だけではありません。家族や親族の関係、これまでの経緯、今後の生活など、さまざまな事情が関わってきます。だからこそ、問題が複雑になる前に、できることから一つずつ準備を進めていくことが大切なのではないでしょうか。

ハレノヒハレは「未来すべて、ハレになれ。」をコンセプトに、お客様の未来を「ハレ」にするために、ファイナンシャル・プランナーとして個人、法人の皆さまの各種ご相談をお受けしています。相続や財産管理について検討したいという方は、必要に応じて専門家とも連携しながらサポートいたしますので、どうぞお気軽にハレノヒハレまでご相談ください。(ご相談したいことがございましたら「お問い合わせ」フォームからご入力をお願いいたします)