2026.10.09

親から山や畑を相続したくない…「いらない土地」だけ手放すことはできる?相続放棄と相続土地国庫帰属制度を解説

親が持っている田舎の土地や山林、使う予定のない畑などを、将来自分が相続することになったらどうしますか。

「預貯金は相続したいけれど、この土地だけはいらない」

「使わない土地なら国に返すことはできないの?」と考える方もいるでしょう。

実は、相続放棄では「いらない土地だけ」を選んで放棄することはできません。

一方、一定の条件を満たせば、相続した土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」があります。

この記事では、不要な土地を相続することになった場合にどのような選択肢があるのか、相続放棄と相続土地国庫帰属制度の違いや費用、注意点などをわかりやすく解説します。

ハレノヒハレは、保険や資産形成だけでなく、相続や老後など、ご家族のお金に関するさまざまなお悩みに寄り添いながら、将来に向けた準備を一緒に考えています。お金に関するお悩みについて相談したい方は、どうぞお気軽にハレノヒハレまでご相談ください。(ご相談は「お問い合わせ」フォームからご入力をお願いいたします)

「預金は欲しいけれど、田舎の土地はいらない」はできる?

相続というと、預貯金や自宅、株式など「財産を受け取る」というイメージが強いかもしれません。

しかし、相続するものの中には、必ずしも相続人にとって価値があるとは限らないものもあります。

例えば、親が地方に山林を持っていたものの、子どもは都市部で生活しており、今後その山を使う予定がないというケースです。

農業をしていた親から田畑を引き継いでも、子どもが農業をする予定がないこともあるでしょう。

土地は所有しているだけで管理が必要になることがあります。

草木が伸びれば草刈りなどが必要になり、樹木が隣の土地へ伸びたり、土地の状態によって周辺に影響を与えたりする可能性もあります。固定資産税がかかる土地であれば税負担も続きます。

「それなら売ればいい」と考えるかもしれませんが、すべての土地に買い手がつくとは限りません。

特に利用価値が低い山林や原野、交通の便が悪い土地などでは、売却したくても買い手が見つからないケースがあります。

「預貯金や自宅は相続したいけれど、この山だけはいらない」と考えるのも自然なことでしょう。

しかし、ここで重要なのが、相続放棄では原則として財産を選ぶことができないという点です。

「この土地だけ相続放棄」はできない

相続放棄とは、亡くなった人の財産について、「この土地はいりません」と個別に選択する手続きではありません。

裁判所は、相続が開始した場合の選択肢として、亡くなった人の権利や義務をすべて受け継ぐ「単純承認」、権利や義務を一切受け継がない「相続放棄」、相続によって得た財産の限度で債務を負担する「限定承認」の3つを案内しています。

つまり、原則として「預貯金1,000万円は相続するけれど、山林だけ相続放棄する」ということはできません。

また、相続放棄などを検討できる期間は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」です。この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、財産の調査が間に合わないなどの事情があれば、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることもできます。

出典:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」

土地を相続したくないときの「相続放棄」とは?

相続放棄は、「不要な土地を処分するための制度」というより、相続そのものから離れるための制度と考えた方がわかりやすいでしょう。

例えば、親に預貯金が100万円ある一方で、借金が1,000万円残っていたとします。

この場合、相続すると借金も引き継ぐことになるため、相続放棄が有力な選択肢になります。

一方、預貯金や有価証券など十分な財産があるものの、その中に「使う予定のない山林が一つだけある」というケースではどうでしょうか。

土地が不要だからといって相続放棄をすれば、原則としてほかの財産も相続できなくなります。

そのため、「土地だけを手放したい」という問題を相続放棄だけで解決することは難しいのです。

相続放棄が向いているのはどんなケース?

代表的なのは、亡くなった人の借金などのマイナスの財産が、預貯金などのプラスの財産を明らかに上回っているケースです。

また、財産全体を確認したうえで、「土地も預金も含め、そもそも相続財産を引き継ぐつもりがない」という場合も相続放棄を検討することがあります。

なお、相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われ、相続権は同じ順位のほかの相続人や、次の順位の相続人(親や兄弟姉妹など)に移ります。

自分が放棄すれば土地の問題がなくなるのではなく、別の親族に引き継がれる可能性がある点にも注意が必要です。

また、放棄の時点でその土地を現に占有している場合には、ほかの相続人などに引き渡すまでその土地を保存する義務が残ります。

一方で、「ほかの財産は相続したい。ただ、この土地だけはいらない」という場合には、相続放棄とは別の方法を考える必要があります。そこで選択肢となるのが、「相続土地国庫帰属制度」です。

いらない土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」とは?

相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日に始まった制度です。

相続や、相続人に対する遺贈によって土地を取得した人が、一定の要件を満たした場合に、その土地を国庫に帰属させる、つまり国に引き渡すことができます。

制度が設けられた背景には、土地を相続したものの「遠くに住んでいて利用する予定がない」「管理することが負担になっている」といった事情から、土地を手放したいという需要が高まっていることがあります。

こうした土地が放置され、将来的に所有者が分からない「所有者不明土地」となることを防ぐ目的もあります。

出典:政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」

この制度の大きな特徴は、相続放棄とは違い、相続した財産全体を手放す必要がないことです。

例えば、親から預貯金と自宅、そして地方の山林を相続したとしましょう。

預貯金や自宅を相続したうえで、要件を満たせば、不要な山林について相続土地国庫帰属制度を利用することを検討できます。

相続放棄との最大の違いは「土地だけ」を手放せること

相続放棄と相続土地国庫帰属制度は、「不要な財産を手放す」という点で似ているように感じますが、仕組みは大きく異なります。

相続放棄は、相続人として亡くなった人の権利や義務を一切受け継がないための制度です。

一方、相続土地国庫帰属制度は、いったん相続などによって取得した一定の土地について、国の審査を受け、承認後に負担金を納めることで国に引き渡す制度です。整理すると、次のようになります。

【相続放棄】

  • 対象:相続そのもの
  • 預貯金:原則として相続できない
  • 借金:原則として引き継がない
  • 土地:ほかの相続財産と一緒に放棄
  • 手続き:家庭裁判所
  • 期間:原則として相続開始を知った時から3か月

【相続土地国庫帰属制度】

  • 対象:一定の要件を満たす土地
  • 預貯金:相続したままで問題ない
  • 借金:この制度を利用してもなくならない
  • 土地:審査を経て国へ引き渡す
  • 手続き:法務局
  • 費用:審査手数料と、承認された場合の負担金が必要

昔相続した土地でも対象になる

「2023年にできた制度なら、それ以前に相続した土地には使えないのでは?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、制度開始前に相続などで取得した土地も対象です。法務省は、数十年前に相続した土地についても制度の対象になると案内しています。

また、相続などによって共有持分を取得した土地についても、共有者全員が共同して申請すれば利用できます。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」

実際にどのくらい利用されている?

「制度はできたものの、実際にはほとんど利用されていないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、制度開始から3年以上が経過し、実際の利用実績も積み上がってきています。

法務省が公表している2026年8月31日時点の速報値では、申請件数は合計5,997件です。

その内訳は、田・畑が2,335件、宅地が2,091件、山林が902件、その他が669件となっています。

そして、実際に国庫へ帰属した件数は3,119件です。

内訳は宅地1,164件、農用地989件、森林203件、その他763件となっています。一方、却下は85件、不承認は100件にとどまります。

もちろん、「申請5,997件のうち3,119件しか認められなかった」という意味ではありません。

審査中の案件もあり、途中で申請を取り下げたケースもあります。

興味深いのは、その「取下げ」の理由です。

同じく2026年8月31日時点で取下げは1,139件ありますが、このうち586件は「有効活用の見込みが生じた」ことが理由です。

具体的には、自治体や国の機関による土地の有効活用が決まったケース、隣接地の所有者から土地を引き受けたいという申出があったケース、農業委員会の調整などによって農地として活用される見込みとなったケースなどが公表されています。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」

これは、不要な土地を持っている人にとって参考になる情報です。

「誰も欲しがらない土地だから国に引き取ってもらうしかない」と思っていたものの、調べてみたら隣の土地の所有者が欲しがっていた、ということもあり得るからです。

そのため、相続土地国庫帰属制度を検討する場合でも、最初から「国に渡す」という方法だけに絞る必要はありません。

どんな土地でも国に引き取ってもらえるわけではない

相続土地国庫帰属制度について、最も注意したいのがこの点です。

「相続した不要な土地を国が引き取ってくれる制度」と聞くと、どんな土地でも引き取ってもらえるように感じますが、実際には要件があります。国が引き取った後はその土地を国が管理し続けることになります。

そのため、管理に過大な費用や労力が必要となる土地まで無条件に引き取る仕組みにはなっていません。

建物がある土地は申請できない

まず、建物がある土地は申請することができません。

例えば、「親が住んでいた古い家が残っているけれど、家ごと国に引き取ってほしい」という利用方法はできないということです。法務省は、申請することができない土地として、次のようなものを挙げています。

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 一定の土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地や、所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地

したがって、古い実家を相続して「使わないから国庫帰属制度を使おう」と考えた場合には、建物が存在する状態では申請できません。

山林なら何でも引き取ってもらえるわけではない

申請すること自体はできても、審査の結果、承認されない土地もあります。

例えば、一定の勾配・高さの崖があり、通常の管理に過分な費用や労力がかかる土地、土地の管理や処分を妨げる工作物や樹木などがある土地、地下に除去しなければならないものが存在する土地等です。

また、隣接する土地の所有者等との争いを解決しなければ管理できない土地やその他、通常の管理・処分に過分な費用や労力が必要となる土地についても承認されない可能性があります。

つまり、「使えない土地ほど国に引き取ってもらいやすい」という制度ではありません。

むしろ、国が引き取った後に通常の管理を行える状態になっていることが重要になります。

境界が分からない土地にも注意

昔から親族が所有している山林などでは、「だいたいこの辺り」とは分かっていても、どこからどこまでが自分の土地なのか明確ではないことがあります。

相続土地国庫帰属制度では、申請する土地の範囲を現地で確認できる必要があります。

法務省によると、申請者が認識している隣接地との境界を現地で確認できることに加え、その境界について隣接地の所有者との間に認識の相違や争いがないことが求められます。

必ずしも測量や境界確認書の提出まで必要というわけではありませんが、「どこにあるのかもよく分からない山だから、そのまま国に渡そう」ということは難しいのです。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」

国に土地を引き取ってもらうにはいくらかかる?

相続土地国庫帰属制度は、国に土地を無料で引き取ってもらえる制度ではありません。

大きく分けて、「審査手数料」と、承認された後に支払う「負担金」があります。

審査手数料は1筆につき1万4,000円

申請時には、土地1筆につき1万4,000円の審査手数料が必要です。

ここでいう「1筆」とは登記上の土地の単位です。そのため、一見すると一つの土地に見えても、登記上10筆に分かれていれば、1万4,000円×10筆=14万円の審査手数料が必要になります。

さらに注意したいのは、この手数料は、申請後に自分から取り下げた場合や、審査の結果、却下・不承認になった場合でも返還されないことです。

そのため、申請する前に、その土地が制度の対象になりそうかを確認しておくことが大切です。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」

承認されたら「負担金」も必要

審査の結果、国庫帰属が承認された場合には、さらに負担金を納付します。負担金は20万円が基本ですが、すべての土地が20万円というわけではありません。

宅地や田・畑、雑種地・原野などは、原則として面積にかかわらず20万円です。

ただし、一部の市街地(市街化区域や用途地域内)の宅地や、一部の市街地・農用地区域等の田・畑は面積に応じて算定され、森林も面積に応じて負担金が決まります。

例えば法務省の資料では、森林の場合、1,500平方メートルで約27万円、3,000平方メートルで約30万円という算定例が示されています。

負担金は、国が土地を管理するための10年分の標準的な費用を考慮して設定されています。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」

なぜお金を払ってまで土地を手放すの?

ここで、「土地を国にあげるのに、なぜこちらがお金まで払わなければならないの?」と疑問に感じる方もいるでしょう。

確かに、土地に十分な市場価値があり、簡単に売却できるのであれば、わざわざ負担金を払って国に引き渡す必要はないかもしれません。

しかし、問題になるのは「売れないけれど、持っている限り管理しなければならない土地」です。

例えば、今後20年、30年にわたって草刈りや樹木の管理、現地確認などを続けなければならない土地であれば、金銭的な負担だけでなく、時間や手間もかかります。

さらに、自分が高齢になった後は誰が管理するのか、自分が亡くなった後は子どもが相続するのかという問題もあります。

そう考えると、負担金だけを見て「高い」「安い」と判断するのではなく、今後その土地を所有し続けた場合にかかる費用や手間、売却できる可能性、次世代への負担などを含めて比較する必要があります。

相続土地国庫帰属制度を利用するまでの流れ

実際に制度を利用するときは、どのような手続きをするのでしょうか。大まかな流れを確認してみましょう。

STEP1 まず土地の状況を確認する

最初に確認したいのは、自分が所有している土地の状況です。

登記事項証明書などを確認し、土地の所在地、地目、面積、所有者、共有者の有無などを把握します。

さらに、現地の状況も重要です。建物が残っていないか、境界が確認できるか、隣地とのトラブルがないか、管理を妨げるようなものがないかなどを確認します。

特に、親や祖父母から引き継いだ古い土地では、所有者自身が場所を正確に把握していないケースもあります。

STEP2 法務局に相談する

「この土地は制度を利用できるのだろうか」と迷った場合は、申請する前に法務局へ相談できます。

相談は法務局・地方法務局の本局で受け付けており、対面だけでなく電話やウェブによる相談も可能です(事前予約制)。

相談する際には、登記事項証明書、法務局で取得した地図(公図)、土地の現況が分かる写真、固定資産税納税通知書など、土地の状況が分かる資料を準備しておくとよいでしょう。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の相談対応について」

ただし、相談の段階で「この土地なら大丈夫そうです」と言われたからといって、承認が保証されるわけではありません。

実際の申請後には、提出資料だけでなく必要に応じて現地の状況なども確認したうえで審査されます。

STEP3 申請書類を作成して申請する

申請には、申請書だけでなく、土地の位置や範囲を明らかにする図面、隣接する土地との境界点が分かる写真、土地の形状が分かる写真、印鑑証明書などが必要です。申請先は、土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局です。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」

STEP4 法務局による審査を受ける

申請後は、法務局が土地について審査します。

提出された書類だけでは判断できない場合には、実地調査などによって土地の状況が確認されます。

この段階で、国が引き取ることのできない土地の要件に該当すると判断されれば、承認されないことがあります。

STEP5 承認されたら負担金を納付する

審査の結果、国庫帰属が承認されると、承認の通知と負担金の納入告知書が届きます。

負担金は、通知が到達した日の翌日から30日以内に納付する必要があります。

そして重要なのは、承認された瞬間ではなく、負担金を納付した時点で土地の所有権が国へ移るということです。

期限までに負担金を納付しなければ承認は失効し、再び同じ土地について国庫帰属を希望する場合には、最初から申請し直す必要があります。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」

国に引き取ってもらう前に検討したい4つの選択肢

不要な土地があるからといって、すぐに相続土地国庫帰属制度を利用する必要はありません。

土地の状況によっては、別の方法の方が適している場合があります。

選択肢1 売却する

まず考えたいのは売却です。「こんな土地は売れないだろう」と思っていても、自分にとって価値がないことと、ほかの人にとって価値がないことは同じではありません。

農地や山林などでは、地域の事情を知る不動産会社などに相談することで可能性が見つかることもあります。

市場価格が高くなくても、買い手が見つかるのであれば、国庫帰属制度の審査手数料や負担金を支払わずに手放せる可能性があります。

選択肢2 隣接地の所有者などへの譲渡を検討する

特に確認しておきたいのが、隣接地の所有者です。

前述した法務省の統計でも、相続土地国庫帰属制度を申請した後、隣接地の所有者から土地を引き受けたいという申出があり、申請を取り下げた事例が紹介されています。

自分にとっては「使い道のない小さな土地」でも、隣の土地と一体化すれば利用価値が高まることがあります。

選択肢3 自治体などへの寄附を検討する

土地の場所や用途によっては、自治体などへの寄附を検討できる場合もあります。

ただし、「不要な土地なら自治体が無料で引き取ってくれる」というわけではありません。

自治体側に利用する目的がなければ、寄附を受けても管理負担が増えるだけだからです。

寄附が可能かどうかは個別に確認する必要があります。

選択肢4 相続土地国庫帰属制度を利用する

売却先が見つからない、隣接地の所有者にも引き取る意思がない、今後自分や子どもが利用する予定もない。

このような場合に、相続土地国庫帰属制度が一つの有力な選択肢になります。

大切なのは、「相続したらすぐ国に引き取ってもらう」と考えるのではなく、売却、譲渡、活用などの可能性も確認したうえで、最も適した方法を考えることです。

土地をそのままにすると子どもや孫へ問題を先送りすることも

「今は特に困っていないから、とりあえず持っておけばいい」と考える方もいるでしょう。

もちろん、将来利用する可能性がある土地や、売却できる可能性がある土地を急いで手放す必要はありません。

一方で、自分自身も使う予定がなく、子どもも必要としていない土地を何となく所有し続けることには注意が必要です。

自分が亡くなれば、その土地も原則として次の相続の対象になります。

さらに、その次の世代へ相続が続けば、相続人の数が増え、権利関係が複雑になっていく可能性があります。

共有者が増えれば、売却や処分をしたいと考えたときに、関係者との調整が必要になることもあります。

「自分の代では特に困らなかった土地」が、子どもや孫の代では大きな負担になることも考えられるのです。

相続登記も義務化されている

以前は、土地を相続しても相続登記をせず、亡くなった親や祖父母の名義のままになっているケースが少なくありませんでした。

しかし、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。

相続によって不動産を取得した相続人は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

また、2024年4月1日より前に発生した相続で、現在も相続登記がされていない不動産も義務化の対象です。

法務省は、施行前から相続したことを知っていた不動産については、原則として2027年3月31日までに申請する必要があると案内しています。

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

つまり、「使わない土地だから名義もそのままにしておけばいい」という対応はできなくなっています。

「親の土地をどうするか」は親が元気なうちに確認しておこう

相続が発生して初めて、「親がこんな土地を持っていたのか」と知るケースもあります。

特に山林や農地、昔購入した土地などは、普段の生活で家族が意識する機会が少ないものです。

そのため、親が元気なうちに、どのような不動産を所有しているのかを一度確認しておくことをおすすめします。

まずは親がどこに土地を持っているのか確認する

実家だけでなく、田畑、山林、原野、昔購入した土地、親自身が相続した土地、共有になっている土地などがないか確認してみましょう。

固定資産税の納税通知書や登記事項証明書なども手掛かりになります。

「土地がある」という情報だけでなく、どこにあるのか、誰と共有しているのか、現在誰かが利用しているのかまで確認できれば、将来の判断がしやすくなります。

土地の価値だけでなく「管理する負担」も考える

相続について考えるとき、どうしても「この土地はいくらの価値があるのか」に目が向きます。

しかし、土地については市場価値だけでなく、「今後いくらかかるのか」という視点も重要です。固定資産税、草刈り、樹木の管理、現地へ行くための交通費など、土地によって必要な負担は異なります。

また、お金だけではなく、年齢を重ねても自分で管理できるのか、遠方に住む子どもが引き継げるのかという問題もあります。

「残したい土地」「売りたい土地」「手放したい土地」を整理する

親が複数の不動産を所有している場合には、すべてを一括して考えるのではなく、将来どうしたいのかを整理してみるのも一つの方法です。

例えば、「実家は子どもが使うので残したい」「駅に近い土地は売却できそうなので相続後に売りたい」「山林は誰も使う予定がないので、今後の処分方法を調べておきたい」というように分けて考えます。

こうした話を相続が発生する前から家族でしておくだけでも、「突然知らない土地を相続する」という事態を減らすことにつながります。

よくある質問

Q. 預金は相続して、山だけ相続放棄できますか?

原則としてできません。

相続放棄は特定の財産だけを選んで放棄する制度ではなく、亡くなった人の権利や義務を一切受け継がないための制度です。

預貯金などほかの財産は相続したうえで、不要な土地だけを手放したい場合には、売却や譲渡、相続土地国庫帰属制度など別の方法を検討することになります。

Q. 相続した土地なら必ず国に引き取ってもらえますか?

いいえ。

建物がある、担保権が設定されている、境界について争いがあるなど、申請することができない土地があります。また、申請後の審査によって、通常の管理に過分な費用や労力が必要と判断されれば承認されない場合もあります。

Q. 建物が残っている実家でも利用できますか?

建物がある土地は、そのままでは相続土地国庫帰属制度の申請をすることができません。「古くなった実家を土地ごと国に引き取ってもらう」という制度ではない点に注意しましょう。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」

Q. 国に引き取ってもらうのは無料ですか?

無料ではありません。

申請時に土地1筆につき1万4,000円の審査手数料が必要です。さらに、承認された場合には20万円を基本とする負担金が必要となり、土地の種類、場所、面積などによっては20万円を超える場合があります。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」

Q. 何十年も前に相続した土地でも利用できますか?

利用できる可能性があります。

相続土地国庫帰属制度が始まった2023年4月27日より前に相続などによって取得した土地も対象となっており、法務省は数十年前に相続した土地についても対象になると説明しています。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」

Q. 制度を利用できるか分からない場合はどこに相談すればいいですか?

相続土地国庫帰属制度については、法務局・地方法務局の本局で相談を受け付けています。

土地が遠方にある場合などは近くの法務局・地方法務局の本局でも相談でき、対面、電話、ウェブによる相談が用意されています。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の相談対応について」

土地の権利関係や相続手続きなど個別の事情が複雑な場合には、司法書士や弁護士、土地の境界に関する問題であれば土地家屋調査士など、内容に応じた専門家への相談も検討するとよいでしょう。

まとめ|「いらない土地」は相続する前から考えておこう

相続財産の中に使う予定のない山林や田畑などがあったとしても、「この土地だけ相続放棄します」ということは原則としてできません。

相続放棄は、特定の財産を選んで手放す制度ではなく、亡くなった人の権利や義務を一切受け継がないための制度だからです。

一方、ほかの財産を相続したうえで、一定の要件を満たす不要な土地だけを手放したい場合には、「相続土地国庫帰属制度」という選択肢があります。

ただし、どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではありません。

建物が残っている土地や境界に争いがある土地などは申請できず、管理に過大な費用や労力が必要となる土地は審査で承認されないことがあります。

また、申請時の審査手数料や、承認後の負担金も必要です。

そのため、「相続放棄する」「売却する」「隣接地の所有者などへ譲渡する」「相続土地国庫帰属制度を利用する」といった選択肢を比較し、その土地や家族の状況に合った方法を考えることが大切です。

そして、もう一つ忘れてはいけないのが「次の世代」の存在です。

自分にとって必要のない土地を「とりあえず持っておこう」と残せば、自分が亡くなったときには、今度は子どもたちがその土地をどうするか考えなければなりません。

相続対策というと、預貯金や生命保険、不動産などの財産を「誰に、どのように残すか」という話が中心になりがちです。

しかし、これからは「何を残さないか」「管理が難しい財産をどう整理するか」という視点も重要になってくるでしょう。

相続は、実際に発生してから初めて考えるものではありません。

親が元気なうち、自分自身も元気なうちに家族で話をしておくことが、将来の負担を減らす第一歩になるのではないでしょうか。

ハレノヒハレは、相続や老後など、ご家族のお金に関するさまざまなお悩みに寄り添いながら、将来に向けた準備を一緒に考えています。相続や資産承継に関してのお悩みについて相談したい方は、どうぞお気軽にハレノヒハレまでご相談ください。(ご相談は「お問い合わせ」フォームからご入力をお願いいたします)