2026.07.31

海外の年金制度と比べてわかる、日本の公的年金のメリット・デメリット

「日本の年金は将来もらえなくなるのでは」――そんな不安の声を耳にすることが増えました。ですが、こうした不安は日本だけのものではありません。少子高齢化や長寿化は先進国に共通する課題であり、各国はそれぞれの形で公的年金制度を運営しています。

海外の制度と比較してみると、日本の公的年金制度の「強み」と「弱み」がより具体的に見えてきます。

今回は、アメリカ・イギリス・ドイツの年金制度と日本を比較しながら、日本の公的年金制度のメリット・デメリットを整理してご紹介します。

ハレノヒハレは「未来すべて、ハレになれ。」をコンセプトに、お客様の未来を「ハレ」にするために公的年金をふまえた老後の資金準備のご相談をお受けしています。「何から準備したらいいかわからない」という方こそ、どうぞお気軽にハレノヒハレまでご相談ください。(ご相談したいことがございましたら「お問い合わせ」フォームからご入力をお願いいたします)

1. 世界共通の考え方「公的年金+自助努力」

日本の年金制度を考えるうえでまず押さえておきたいのが、「公的年金だけで老後生活のすべてを支える」という国はほとんどないという事実です。

OECD(経済協力開発機構)の報告書によれば、多くの先進国では、公的年金・企業年金(職域年金)・個人年金という複数の柱を組み合わせた「多層的な年金制度」が一般的とされています。

(出典:OECD日本政府代表部 OECD報告書「図表で見る年金2021年版」

これは、平均寿命が延びて老後期間が長期化する中で、国だけがすべての生活保障を担うことが難しくなっているためです。

日本もこの世界的な流れの中にあり、「公的年金を土台としながら、自分自身でも準備する」という考え方は、実は世界共通のスタンダードなのです。

2. アメリカ・イギリス・ドイツの年金制度

アメリカ:ソーシャル・セキュリティと自助努力の組み合わせ

アメリカの公的年金は「ソーシャル・セキュリティ(Social Security)」と呼ばれる制度が中心です。現役時代の所得に応じて保険料を納め、一定の条件を満たした人が老後に給付を受け取る仕組みで、現役世代が高齢世代を支える社会保険方式という点は日本の厚生年金と共通しています。

(出典:「社会保障協定(日米社会保障協定)」 )

一方で、アメリカでは企業が提供する401(k)などの確定拠出型年金や、個人が任意で加入するIRA(個人退職口座)を活用した資産形成が広く普及しています。401(k)は勤務先の企業を通じて加入し、給与から一定額を天引きして株式や投資信託などで運用する仕組みで、企業が拠出金の一部を上乗せする「マッチング拠出」を採用している会社も少なくありません。IRAは企業に属さない個人でも加入できる制度で、こちらも税制優遇を受けながら自分で運用先を選べます。

このように、アメリカでは「公的年金+確定拠出型の私的年金」という組み合わせが老後資金準備の基本形になっており、公的年金の給付水準を過度に前提とせず、現役時代から自分自身で老後資金を積み立てるという発想が、日本以上に浸透しているのが特徴です。反面、運用成績次第で将来受け取れる金額が変動するというリスクを、個人が直接引き受ける制度でもあります。

イギリス:国家年金と「自動加入制度」

イギリスの公的年金は「国家年金(State Pension)」です。ただし、公的年金だけで老後生活をすべて支えるという考え方ではなく、企業年金・個人年金の役割が大きいことが特徴です。

(出典:国立社会保障・人口問題研究所 海外社会保障研究

特に注目したいのが「自動加入制度(Auto Enrolment)」です。これは、一定の条件を満たす労働者を自動的に企業年金へ加入させる仕組みで、加入したくない場合は本人が手続きをして脱退することもできますが、何もしなければ自動的に加入が続く「初期設定」になっている点がポイントです。

人は目の前の手続きを先延ばしにしがちであるという行動経済学の知見を踏まえ、「気づいたら老後資産形成が進んでいた」という状態を制度側からつくり出す工夫だといえます。

この結果、イギリスでは企業年金への加入率が大きく向上したと報告されています。日本ではiDeCoやNISAは本人が申し込む制度であり、イギリスのように国全体として企業年金への自動加入を義務付ける制度とは異なります。この違いは、老後資産形成を後押しする制度設計を考えるうえで参考になる点でしょう。

ドイツ:日本と似た社会保険方式、共通する課題

ドイツの年金制度は、日本と同じく社会保険方式を基本としています。会社員は公的年金に加入し、保険料は労使で折半します。

少子高齢化という課題も日本と共通しており、制度の持続可能性を確保するための改革が継続的に行われています。具体的には、支給開始年齢の段階的な引き上げや、保険料率・給付水準の見直しなど、日本の年金改革と似た議論が繰り返されてきました。

ドイツでも、公的年金(1階部分)に加えて、企業年金(2階部分)や個人年金(3階部分)による多層的な老後保障という考え方が定着しつつあります。社会保険方式という制度の骨格が日本と近いからこそ、「同じ課題にどう向き合っているか」という視点で比較しやすい国だといえるでしょう。

海外と比べた日本の年金制度の特徴

3か国と比較すると、日本の公的年金制度には次のような特徴が見えてきます。

  • 国民全員が加入する「国民皆年金制度」である
  • 一定の条件を満たせば生涯受け取れる終身保障がある
  • 老齢年金だけでなく、障害年金・遺族年金という保障も備えている
  • 会社員には厚生年金という上乗せ制度があり、保険料は会社と折半

一方で、少子高齢化による制度維持の課題は、日本もアメリカ・イギリス・ドイツと同様に抱えています。つまり、日本の年金制度は「特別に脆弱」というわけではなく、先進国に共通する課題を抱えながら、独自の手厚い保障を持つ制度だといえます。

また、アメリカやイギリスと比べると、日本は公的年金の給付範囲が広い分、個人が自由に運用方法を選べる余地は小さいという違いもあります。どちらが優れているというより、「社会全体でリスクを支え合う仕組み」を重視するか、「個人の選択の自由」を重視するかという、制度設計の考え方の違いだと捉えるとよいでしょう。

3. 日本の公的年金制度のメリット

メリット① 一生涯受け取れる終身保障

公的年金の大きな特徴は、生涯にわたって受け取れる「終身保障」であることです。

老後資金を考えるうえで大きなリスクの一つが「長生きによる資金不足」です。預貯金は使い続ければ残高が減っていきますが、公的年金は一定の条件を満たせば生涯にわたって受け取ることができます。

長寿化が進む現代において、これは大きな安心材料です。

メリット② 障害年金・遺族年金という保障

公的年金は老後だけの制度ではありません。

病気やけがで生活や仕事が制限される状態になった場合の「障害年金」、一家の働き手が亡くなった場合に残された家族を支える「遺族年金」という役割も持っています。

(出典:日本年金機構「障害年金」「遺族年金」

現役世代にとっても、万一の際の生活保障として機能している点は、老後保障というイメージだけで語られがちな公的年金の、見落とされやすい強みです。

メリット③ 物価・賃金変動に応じた改定の仕組み

年金額は、社会経済状況の変化に対応するため、毎年度改定される仕組みになっています。

物価や賃金の変動を考慮することで、実質的な価値をある程度維持する役割があります。ただし、少子高齢化による現役世代への負担を考慮した「マクロ経済スライド」という調整の仕組みも導入されています。

(出典:厚生労働省「マクロ経済スライドについて」

メリット④ 厚生年金には会社負担がある

会社員が加入する厚生年金は、保険料を会社と従業員が折半します。同じ保険料負担でも、実際には会社からも同額程度が拠出されているため、会社員にとって大きなメリットです。

給与に応じて将来の年金額が増える仕組みでもあるため、働きながら老後保障を形成できる制度といえます。

なお、厚生労働省の発表によると、令和8年度の国民年金の満額は月額約7万円(70,608円)、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む厚生年金の標準的な年金額は月額約23万7千円(237,279円)程度とされています(あくまで目安であり、実際の受給額は加入期間や給与水準により異なります)。

(出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」

4. 日本の公的年金制度のデメリットと課題

少子高齢化による制度維持への課題

公的年金制度は、現役世代が納める保険料をその時点の高齢者世代への給付に充てる「賦課方式」を基本としています。

以前は多くの現役世代が少数の高齢者を支える構造でしたが、現在は高齢者人口の増加と出生数の減少により、現役世代一人あたりの負担が大きくなっています。

(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」

この課題は、先ほど紹介したアメリカ・イギリス・ドイツにも共通するものですが、日本は少子高齢化のスピードが特に速いとされ、制度改正の議論も継続的に行われています。

将来的な給付水準への不安

 受給開始年齢、保険料負担、給付水準については、社会環境の変化に応じて今後も議論が続く可能性があります。

ただし、「年金制度がなくなる」ということではなく、時代に合わせて調整されながら運営されているという点は押さえておく必要があります。

大切なのは、不安だけで判断するのではなく、現在の制度を理解したうえで自分自身の準備を考えることです。

自分で自由に運用できる制度ではない

公的年金は社会保障制度であるため、個人が自由に投資先を選んだり、途中で引き出したりすることはできません。

アメリカの401(k)やIRA、イギリスの企業年金のように、加入者自身が運用方法を選べる私的年金と異なり、公的年金はあくまで「社会全体でリスクを支え合う」仕組みです。

その分、運用リスクを個人が直接負わずに済むという側面もあり、一長一短といえます。

5. 海外の工夫から考える、日本での老後資金準備

ここまで見てきたように、アメリカの401(k)・IRA、イギリスの自動加入制度は、いずれも「個人が老後資産形成を続けやすくする仕組み」という共通点があります。

日本でこれに近い役割を果たしているのが、NISAやiDeCoです。

NISAは、株式や投資信託の売却益・配当金などにかかる税金が非課税になる制度で、長期・積立・分散投資の受け皿として活用されています。

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選ぶ私的年金制度で、掛金が所得控除の対象になる、運用益が非課税になる、受取時にも税制優遇があるといった特徴があります。ただし、原則60歳まで引き出せない点には注意が必要です。

(出典:金融庁「NISAとは」

国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」

日本のiDeCoやNISAは本人が申し込む制度となっており、イギリスのように国全体として企業年金への自動加入を義務付ける制度とは異なります。だからこそ、公的年金の仕組みを理解したうえで、NISAやiDeCoへの加入を自分自身の意思で「初期設定」にしていくという発想が、老後資金準備の第一歩になります。

6. よくある質問(Q&A)

Q1. 日本の年金制度は将来なくなってしまうのでしょうか?

「年金制度がなくなる」という可能性は極めて低いと考えられています。

公的年金は高齢者だけでなく、障害年金や遺族年金など現役世代も支える社会保障制度であり、国の根幹となる制度です。

今後も少子高齢化など社会環境の変化に応じて、保険料や給付水準、受給開始年齢などの見直しは続く可能性がありますが、制度そのものがなくなるというよりも、持続可能性を維持するための調整が行われていくと考えるのが適切でしょう。

Q2. 海外の方が日本より年金制度は優れているのでしょうか?

一概にどちらが優れているとはいえません。

アメリカやイギリスでは、自分で老後資金を運用・形成する自由度が高い一方で、運用成績によって受取額が変動するリスクもあります。

一方、日本は終身保障や障害年金・遺族年金などの社会保障が充実しており、社会全体で支え合う仕組みが特徴です。

それぞれ制度設計の考え方が異なるため、自分に合った資産形成を組合せることが重要です。

Q3. 公的年金だけで老後生活はできますか?

必要な生活費やライフスタイルによって異なります。

持ち家か賃貸か、退職金の有無、老後も働く予定があるかなどによって必要な資金は大きく変わります。

そのため、公的年金を老後生活の「土台」と考え、不足する部分をNISAやiDeCo、企業年金、個人年金保険などで補うという考え方が一般的です。

Q4. 老後資金の準備は何歳から始めるのがおすすめですか?

できるだけ早く始めることをおすすめします。

資産形成は時間を味方につけることで複利効果が期待できるため、20代・30代から少額でも積み立てを始めることには大きなメリットがあります。

もちろん40代・50代からでも遅すぎることはありません。大切なのは、自分の年金見込み額や退職後の生活設計を確認し、無理のない範囲で継続して準備することです。

Q5. NISAとiDeCoはどちらを優先した方がよいですか?

どちらが適しているかは目的によって異なります。

NISAは必要なときに売却・引き出しができるため、教育資金や住宅資金などにも活用しやすい制度です。

一方、iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、掛金が所得控除の対象になるなど税制メリットが大きく、老後資金を計画的に準備したい方に向いています。

ご自身のライフプランや家計状況に合わせて選択することが大切です。

7. まとめ:海外との比較から見える、日本の年金との付き合い方

海外の年金制度と比較すると、日本の公的年金制度は「国民皆年金」「終身保障」「障害・遺族年金」「厚生年金という上乗せ」という手厚さを持つ一方、少子高齢化による負担増という課題は先進国共通のものであることがわかります。

そして、アメリカの401(k)・IRA、イギリスの自動加入制度に見られるように、世界的に見ても「公的年金を土台としながら、自助努力で上乗せする」という考え方が主流です。

日本においても、NISAやiDeCo、個人年金保険などを活用しながら、公的年金だけでは不足する部分を計画的に準備していくことが、これからの時代にはより重要になっていくでしょう。

公的年金を正しく理解することは、将来への不安を減らし、自分らしい人生を描くための第一歩になります。

ハレノヒハレは「未来すべて、ハレになれ。」をコンセプトに、お客様の未来を「ハレ」にするために、公的年金をふまえた老後の資金準備のご相談をお受けしています。「ご自身の年金見込み額を踏まえて何から準備すればいいか知りたい」という方は、どうぞお気軽にハレノヒハレまでご相談ください。(ご相談をご希望の方は、「お問い合わせ」フォームからお気軽にご連絡ください。)